様々なバルブ・弁名称一覧

バルブの名称は多岐にわたり、混乱のもととなっています。
その原因として考えられるのが、「表記ゆれ」と「呼び方の使い分けがなされていない」ことです。
例えば会社に入った新入社員に対して、とあるグローブ弁を指しつつ「このドレン弁開けて!」と指示したら、そのバルブ(グローブ弁)=ドレン弁と記憶してしまいます。しかし実際はドレン弁=グローブ弁ではありません。
正確を期した言い方をすると「用途はドレン弁として使っている、材質は鋳鋼弁の、操作方法は手動弁の、開閉原理はグローブ弁のそのバルブを開けて」となってしまうわけです。
つまり問題は用途・材質・操作方法・開閉原理によって呼び方が違ってしまうことにあるのです。それぞれの呼び分けで下記にまとめました。
名前を知らないがゆえに知りたい情報にたどり着けない、ということがこのIT時代しばしばありますので参考にしてもらえばと思います。
ここでは主に化学工業で使用されるバルブについて記述してあります。

バルブの材質による種類分け

バルブの材質によって呼ぶことがあります。流体に対する腐食性等を懸念して、材質を特に気にする場合に使用します。

バルブ名称 説明
青銅・黄銅バルブ 材質が青銅・黄銅のバルブ。一番安価なバルブ。空気・窒素・水などの中低圧でよく使用される。
鋳鋼弁・マレブルバルブ 材質が鋳鋼(FCDなど)のバルブ。大量生産に向き、小口径品は安価で一般的によく出回っているバルブ。大口径となると鋳型がメーカーにもない場合があり、値段と納期が大変なことになる。
鍛鋼弁 材質が鍛鋼(炭素鋼やSFVCなど)のバルブ。当然ながら鋳鋼より高価なバルブ。
ステンレス弁 材質がステンレス(SCSなど)のバルブ。内部流体に錆が混入しない。長年屋外で使用しても劣化しにくい。当然鋳鋼より高価。

バルブの操作方法による種類分け

操作方法によっても呼び方が違います。操作可能かどうか話すときなどに使用します。
例:「そのラインの途中に手動弁あるから、そこを閉めれば大丈夫ですね」とか「あそこの自動弁壊れたから修理しなきゃ」とか。

バルブ名称 説明
手動弁(しゅどうべん・てどうべん) 人間の手で操作するバルブ。ハンドルが付いている。レバー・ギア・ハンドルなどがある。
自動弁・他力弁 手動弁の反対。人間の手で操作しないバルブ。電磁弁・電動弁・自力弁・空力弁などを総称して言う。遠隔操作できるバルブを主に言う。他力弁は自力弁と比較して使われる用語である。
電磁弁・ソレノイド弁・ソレノイドバルブ 電磁石で弁を開閉するバルブ。主に全閉全開のみ対応が多い。
電動弁 モーターなどで弁を開閉するバルブ
空力弁・ベストルク弁 空気の圧力で弁を開閉するバルブ。電気を使わないため防爆対応が簡単であることが利点。
自力弁 弁の内部構造によって開閉するバルブ。減圧弁や安全弁など。逆止弁は慣例上自力弁とは言わない。

バルブの用途による種類分け

これが現場では一番使われるのではないでしょうか。運転上はいちいちグローブバルブ開けてなんて言いません。
例:「窒素の元弁開けた?」とか「バイパスさせるからバイパス弁開けて」とか。

バルブ名称 説明
ブロー弁・ブローバルブ 配管やタンクの底面にたまったスケール等をブロー(吐き出す)ために使用する弁のこと。スケールが詰まらないように・詰まったときに番線で突けるようにボール弁が好ましい。
縁切り弁・ブロック弁・ブロックバルブ メンテナンス用に一時的に縁を切るため使用する弁のこと。バケットストレーナや自動弁を挟むようにして二つ使用する。縁切り弁を二つ閉めることにより、その間にある機器を外してメンテナンスすることができる。
バイパス弁 バイパスラインに取り付ける弁のこと。
エアー抜き弁・空気抜き弁・ベントバルブ・ガス抜き弁 配管に溜まっているエアーやガスを抜くために使用する弁のこと。
液抜き弁・ドレン弁 配管に溜まっている液やドレンを抜くために使用する弁のこと。これがあると一時的に圧力を測りたいとき、液を採取したいときに重宝する。またこの弁がないと工事の時に液処理で苦労する。
脱圧弁・圧抜き弁 配管やタンクの内圧を下げるために使う弁のこと。工事用やストレーナ開放時などに、解体作業を安全に行うために使用する。
元弁・元バルブ ライン上の一番初めにあるバルブ。ポンプ元弁や圧力計元弁のように使用する。
工事弁・施工弁・捨てバルブ 工事用のためのみに設置されているバルブ。工事の時にのみ閉で使用し、その後は操作しない。
コントロール弁・コントロールバルブ・調節弁・流量調節弁(流調弁(りゅうちょうべん)) 流量を調節するために使用するバルブ。主に自動弁のことを言う。
切り替え弁・切替弁・系統切換弁 系統を切り替える際に使用するバルブ。

バルブの開閉原理による種類分け

バルブの種類分けとして、よくされるのがこの開閉原理による分類です。操作性・流体抵抗・メンテナンス性等々それぞれ特徴があり、目的に合ったバルブを選ぶ必要があります。

バルブ名称 表記ゆれ 流量調節 流体抵抗 備考
ゲートバルブ シャッターバルブ・仕切弁・スリースバルブ・スルースバルブ・制水弁 なし
グローブバルブ 玉形弁・ストップバルブ あり
ボールバルブ なし
ダイヤフラムバルブ サンダース弁・ダイアフラムバルブ あり
バタフライバルブ 蝶型弁 あり
ニードルバルブ あり
チェッキバルブ チャッキバルブ、チェックバルブ、逆止弁、逆止め弁、ノンリターンバルブ なし

特殊弁の呼び方

その他それぞれ固有名称で呼ぶバルブをまとめました。

バルブ名称 備考
安全弁・セーフティバルブ・リリーフバルブ・逃し弁 弁の一次側圧力が一定以上となったときに開となり、一定以下となると閉となるバルブ。
遮断弁・緊急遮断弁 ラインを遮断するために使うバルブ。インターロック作動時などに緊急停止用に使用するバルブ。
減圧弁・圧力調整弁 弁の二次側圧力を小さくするバルブ。
フート弁・フートバルブ ポンプ等のサクションラインに使用する逆止弁の一種。
ブリザーバルブ・ブリーザーバルブ・呼吸弁・吸排気弁・通気弁 タンクの受け入れ払い出しに対する圧力変化を吸収し、内圧を一定に保つバルブ
ベローズバルブ 弁内部にベローズを使用し、グランドシール部からの漏れを防ぐバルブ。
定水位弁・ボールタップバルブ ボールタップ等により開閉し、水位を一定に保つためのバルブ
分岐弁・ダイバーターバルブ 三方弁・四方弁などがあり、流体の分岐や合流を切り替えるバルブ
ロータリーバルブ 主に粉体用のバルブ。バルブの弁体が回転して排出するバルブ。水車みたいなイメージ
チョークバルブ・ミューコンバルブ・ピンチバルブ 主に粉体用のバルブ。ナイロン・ゴム・布などでできた管を絞って開閉するバルブ
トラップ 気体と液体を分離するための自動バルブの一種。
ラプチャーディスク 管に取り付けられた蓋のような円板。圧力が設計値以上になると板が割れて開状態となる。バルブに定義されるかは不明

記事を書いた日 2017年10月

文責 ellery459

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